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一滴の通り道

ぼる

夏の盛り、水の村を潤す水路がぴたりと止まった。山腹の古い導水路が崩れた土と石でふさがれたのだ。壁が薄いため、強い水流で押し流せば水路そのものが裂けてしまう。大人の肩が入らないほど狭い横穴に、十歳のシズクと親友のレイが縄をつけて入ることになる。 シズクは一滴の水しか出せない落ちこぼれで、レイは兄であり長でもあるソウマから「おまえの水は強すぎる」と言われたばかりの天才だった。穴の奥の詰まりを前に、レイの大きな術は役に立たない。シズクが気づいたのは、細く漏れる水が通るところだけ、土の色が濃いことだった。毎朝ひとりで一滴の水を見つめてきたシズクは、その土に一滴ずつ水を染み込ませはじめる。レイは自分の力を針の先ほどまで絞り、その一滴が流れないように支える。 何百もの一滴が積み重なり、全体を支えていた「鍵の石」が抜ける。水は再び村へ流れ出した。その夜、母ミオの う言葉を聞きながら、シズクはお椀に一滴を落とす。小さな波紋が、縁まで確かに届いた。

ファンタジー音声あり