「猫耳だけでOK」というグループLINEを、私は信じた。
幹事の部長、田所《たどころ》が打った一文だ。ハロウィンの仮装は手抜き歓迎、と。
前夜、日向《ひなた》はドンキで全身ゾンビセットを手に取った。千九百八十円。棚に戻した。
信じよう。百円の猫耳を買った。
翌朝、会議室の扉を開けた。
ゾンビ。魔女。吸血鬼。全員が本気だった。
「日向さん、猫耳だけ?」
「……LINEに、そう書いてありました」
奥で、巨大な恐竜が立ち上がった。
「ああ。あれね」
田所の声が、着ぐるみの中でこもった。
「ああ書けば、みんな本気を出すと思って」
「部長が一番、本気じゃないですか」
「毎年そうなんだ」
恐竜が親指を立てた。
翌年、幹事は私だった。
LINEに打つ。
「猫耳だけでOK」
送信すると、新人からすぐ返信がきた。
「信じます!」
