息子は作文に、母を逮捕すると書いた。
夜十一時、台所。パソコンを打つ私に、パジャマの息子が言った。
「お母さん、作文、読んだ?」
「読んだよ。私、何かした?」
「してる。毎日してる」
「えっ、何を?」
「ねないで、しごとしてる」
「それは犯罪じゃないよ」
「先生が言ってた。きまりをやぶるのは、はんざいだって」
「寝るのは、きまりなの?」
「うん。からだの、きまり」
「逮捕したら、どうするの?」
「ぼくが、ろうやに入れる。ぼくのふとんの、となり」
「それ、ただの寝室でしょ」
「かぎもかける。朝まで出られない」
私は時計を見て、ふっと笑った。
「……朝までか。長い刑だな」
「つみは、ねぶそく。はい、たいほ」
私は、ゆっくりパソコンを閉じた。
「お母さんを一番に助けるのは、ぼくだから」
