「ねえ、俺が今から言うこと、全部嘘な」
「蒼《あお》、それ仕返しでしょ」
「ひなたの左手の指輪、全然似合ってない」
「嘘ね。毎日つけてるもん」
「毎朝起こされるの、実はちょっと迷惑」
「嘘。昨日も目覚ましより先に起きてたくせに」
「ひなたの味噌汁、あんまり好きじゃない」
「嘘ね。おかわりしたでしょ」
「プロポーズして、後悔してる」
「……嘘、だよね」
「嘘。ちゃんと嘘」
「今、ちょっと間があった」
「ルールだから。次、最後ね」
「うん」
「ひなたと、一生一緒にいたくない」
「……嘘ね」
「ごめん。それだけ、嘘がつけない」
「え?」
「言おうとしただけで、喉が詰まった」
「ばか。じゃあ、もう一回、最初から言って。全部嘘で」
