鍵は三本しかない。それなのに、貴重書庫の金庫は空だった。
扉にも警報にも、壊された跡はない。
「アントワープの世紀の強盗と、同じですね」
圭吾《けいご》が、静かに言った。
「壊さずに開けた、っていうあの話ね」
「ええ。壊さずに開けられるのは、鍵を知る人だけです」
「鍵は、館長と、あなたと、私」
「館長は入院中です。僕の鍵は、昨夜から涼子《りょうこ》さんが預かってますよね」
「ええ。私の鍵と、あなたの鍵。どちらもここにある」
「館長の鍵も、机の中でしょう。なら三本とも無事だ」
私は、息を止めた。
「館長の鍵が私の机に入ったのは、昨日の夕方。誰にも言ってない」
圭吾の笑顔が、止まった。
「どうして、三本目の場所を知ってるの」
「それは」
「四本目を持ってる人だけよ。三本しかない鍵の場所まで、知ってるのは」
