古い駄菓子屋のレジの下から、ひらがなだけの脅迫状が出てきた。
店を譲り受けて三日目のことだ。
「みせを やすまんと、あんたの だいじなもん かくしたるで」
声に出して読むと、バイトのかのんが青ざめた。
「それ、昭和五十九年《しょうわごじゅうきゅうねん》の、あの未解決の脅迫事件と同じ書き方ですよ」
「まさか。前の店主さん、脅されてたの?」
封筒は四十通。消印は毎年ちがい、宛名はどれも「みせのひとへ」。
「この丸い字、奥さんの字だって聞きました。関西の人だったって」
かのんが、ふっと笑った。
「店ばっかりで構ってくれない旦那さんへの、毎年の仕返しですよ」
「かわいい犯人だね」
そのとき、束の底から、切手の新しい封筒が一枚落ちた。
宛名は「あんなへ」。消印は、昨日。
その奥さんは、二年前に亡くなっている。
