男は取調室で手を合わせ、いただきますと言った。
「三十日間、何を食べていたんです」
「みなさんです」
「……は?」
「順番は、くじで。公平に」
「やめてくれ」
「一番おいしかったのは、一番優しかった人です」
「やめろ!」
「焼くと、ぱち、ぱちと鳴るんです。今でもお腹が鳴ります」
「うっ……」
「骨は、洗って揃えました。失礼のないように」
「なんで、そんなこと」
「毎回、ごちそうさまも言いました。ちゃんと」
「……狂ってる」
「刑事さん、残すのは失礼ですよ」
「食えるか、こんなもの!」
男はカツ丼をひと口食べた。
「ああ、ただの豚ですね」
男はふと、刑事の手を見た。
「あなたの手、おいしそうですね」
そう言って、もう一度、手を合わせた。
