展示室の額縁は、三年前から空のままだ。
「ボストンの美術館みたいですね。盗まれた絵の額縁を、今も飾ってる」
麻衣《まい》が言うと、圭吾《けいご》は眼鏡を押し上げた。
「あちらは名画十三点。うちは猫の絵が一枚だけです」
「警官を名乗る二人組に、持っていかれたんでしたね」
「ええ。袖の余った、ぶかぶかの制服の偽物にね」
「あなた、その時は書庫にいたのよね」
「はい。何も見ていません」
「じゃあ、どうして袖のことを?」
圭吾の笑みが止まった。
「調書に、袖のことは一行もないの」
「……」
「空なのは額縁だけじゃない。あなたの三年前の話も、よ」
