終電の仮装の中に、本物が一人いる。見分け方は、目が合っても笑い返さないこと。
先輩から届いたLINEを、私は吊り革につかまって読み返した。
ハロウィンの終電は、ゾンビとかぼちゃ頭とピエロで満員だった。
スーツ姿の私だけが、浮いている。
端から順に、目を合わせていく。
ゾンビが笑い返した。かぼちゃ頭も、ピエロも笑い返した。
なんだ、みんなただの仮装だ。
最後に、車両の端を見た。
魔女がひとり、笑わずに私を見ていた。
見つけた。
私は人をかき分け、隣の車両へ逃げた。
扉を開けると、乗客の全員が、笑って迎えてくれた。
胸をなで下ろしたところで、先輩から続きが届いた。
「ごめん、ルール逆。本物は、笑い返すほう」
顔を上げると、全員が、笑っていた。
