一人暮らしの母は、毎日、米を三合炊く。
七年ぶりに帰った実家の台所で、私は炊飯器の目盛りを見て呆れた。
「お母さん、一人なのに三合は多いよ」
「あなた、昔は毎晩おかわりしてたでしょ」
「それは七年前の話」
母は笑って、炊きたてのご飯を握りはじめた。
冷凍庫を開けると、おにぎりがぎっしり詰まっていた。
ラップの日付は、どれも先週と今週のものだ。
「古いのは、私が食べるの」
「それでも多いって。もう少し減らしなよ」
「癖なのよ」
帰らなかった七年を思うと、私はそれ以上言えず、その夜は泊まった。
翌朝、台所から米を量る音がした。
「一合は私」
母は小さく言って、もう一杯すくった。
「二合は、」
そこで口を閉じ、私に気づくと、黙って米を研ぎはじめた。
二合は、毎晩おかわりしていた私の分だった。
七年間、母は毎朝、帰ってくるかもしれない私の分まで炊いていた。
