こたつ布団を出したら、見覚えのない子どもの靴下が落ちていた。うちに子どもはいない。
黄色い、小さな靴下。片方だけだった。
「ねえ、これ誰の?」
夫に見せると、彼は手を止めて、不思議そうに笑った。
「何言ってるの。毎年、君がこたつと一緒に出すやつじゃないか」
毎年。そんな覚えはない。
「去年は、この靴下を抱いて泣いてたよ。おととしも」
私は、もう一度靴下を見た。かかとの内側に、油性ペンで小さく名前が書いてある。
私の字だった。
夫が、そっと言った。
「春になると、君は全部忘れるんだ。だから僕も、毎年、初めて答えてる」
窓の外で、日が暮れていく。
来年、こたつを出したら、私はまた、この靴下を初めて見る。
