お茶をどうぞ

ぼる

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押し入った強盗が、見知らぬ老人にお茶を出された。
深夜二時、冷え切った台所。ナイフを握る若い男の前で、老人は物置の脇で、毛糸の手袋のまま湯呑みを傾けていた。
「金を出せ!」
「二階のたんす、二段目だ。たいした額じゃないぞ」
「ふざけんな。ナイフが見えないのか」
「見えとる。だから茶を淹れとる。慌てなさんな」
老人はまだ温かいやかんから急須に湯を注いだ。
「取っておきの茶だ。飲みなさい」
若い男は震える手で受け取った。
「警察は呼ばないのか」
「茶が冷めてからでいい」
「あんた、怖くないのか」
「怖がる歳は過ぎた。靴は脱ぐなよ。長居はせん」
そのとき、二階で床がきしんだ。
老人は湯呑みを置き、声をひそめた。
「本物の主人が起きた。物置に隠れなさい」
「……あんた、誰だ」
「お前より三時間早く来た、ただの先客だ。茶は、ここの主人の取っておきだがな」

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