彼女は笑顔で、床下に人が埋まっていると言った。
工事の前夜、れんはスコップを握り、床板の前に立っていた。
ゆいは椅子で足をぶらぶらさせている。足は床に届かず、音もしない。床には供えた白い百合とケーキ。
「頼む、ゆい。今夜中に掘り出さないと、全部ばれる。僕が何とかする。ゆいは何も言うな」
「だめ。あの子、やっと静かになったの」
「あの子って、誰だよ」
「かわいそうな子。冷たくて、ひとりぼっちで。だからお花も、ちゃんと供えてあるでしょ」
「……好きだったケーキ、今月も買ってきた」
「ありがとう。でも、もう食べられないの」
「せめて外に出よう」
「出られないよ。あの夜から、この戸口を一歩も」
「ごめん。ごめんな、ゆい。階段で押したのは、僕なんだ」
「知ってる。でも、怒ってないよ」
「あの子はね、私」
「この床の下の私。れんくんの足音が聞こえる、ここが好きなの」
「だから、引っ越しはだめ。ずっと、一緒でしょ?」
