八日目の夜、押し入れの戸の前に、おにぎりが置かれた。
「今日は梅だよ。出てこないの?」
「降りたら、終わるから」
「また塔の話?八日目だよ、もう」
「太陽の塔の目に、八日こもった人がいただろ。かのん、俺もあれと同じだ」
「違うよ」
「何が」
「その人は、八日で降りたもん。大輝さんは、九日目に入っちゃう」
戸が、指一本ぶん開いた。
「大輝《だいき》さん。八日前、自分が何を言ったか覚えてる?」
「結婚しようって言った」
「私の返事は?」
「聞こえなかった。聞く前に、ここへ逃げたから」
「『はい』って言ったんだけどな」
中で、息をのむ音がした。
「ねえ。返事、九日目からは変えてもいい?」
