七時のお湯

ぼる

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先月から、祖母はうちで暮らしている。
足を悪くして、ひとり暮らしが続けられなくなったからだ。
祖母の家には、見守りポットだけが残してある。
お湯を沸かすたびに、スマホへ通知が届く仕組みだ。
今はその通知が、私のスマホに来る。
「七時三分、お湯を使いました。」
毎朝、同じ時刻に届く。
空っぽの家で湯気が立っているところを思うと、私は少しほっとする。
あの家の鍵を持っているのは父だけだ。
出勤前に寄って、風を通すついでに沸かしてくれているのだろう。
そう思っているので、確かめたことはない。
うちの朝は、七時に食卓から始まる。
「あの家ではね、湯呑みをいつも二つ出していたのよ」
ばあちゃんが味噌汁をすすりながら言う。
「ひとつは、おじいさんの分。三年も経つのに、癖が抜けなくて」
「ポット、今日も元気だったよ」
「あら、よかった」
ばあちゃんは目を細める。
父は新聞をめくりながら、黙って頷いた。

先週から、通知の文面が少し変わった。
「七時三分、お湯を使いました。二杯分。」
父にも、お客さんが来る日があるんだな、と思う。
それ以上は考えない。
今朝も、同じ通知が届いた。
父も祖母も私も、食卓で味噌汁をすすっていた。
七時三分。二杯分だった。

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