白いヘルメット

ぼる

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物置の奥から、白いヘルメットが出てきた。
祖父の四十九日の夜、遺品の整理は物置まで進んでいた。
「昭和四十三年の、あの三億円事件ですね」と健太《けんた》さんが古い切り抜きを見て言う。手伝いの業者さんだ。
隣の缶には、古い五百円札の束があった。
「番号が控えられていた札だ」と大輝《だいき》が静かに言う。「使えば足がつく」
「やめてよ、おじいちゃんがそんな」と涼子《りょうこ》叔母さんが声を上げた。
翌朝、缶は消えていた。
「札束だけ盗んで、封筒ごと消えたんでしょ」と颯太《そうた》があくびをする。
「封筒なんて、誰も言ってないけど」と私は言った。
「麻衣《まい》ちゃん、揚げ足っすか」
「昨夜十一時、缶の写真を上げただろ」と大輝。「蓋の隙間に茶封筒が写ってる。三時まで友達と通話もしてた」
颯太は肩をすくめた。
「では、これは」と涼子さんが、健太さんのトラックから空の封筒を持ってきた。同じ大きさだった。
「会社の標準です」と健太さんは慌てない。「昨夜、整理用に全員へ配りました。古いお札が額面以上の値打ちなのは、知ってますけど」
「涼子さんは、お店が苦しいんですよね」と私は言う。
「私を疑うの? ……警察には言わないで」
「やましくないわ。ヘルメットが出たら、あの人の名前が世間に何て言われるか」
「番号を調べれば早い」と大輝は淡々と言う。「麻衣、昨夜は最後まで物置にいたよな」
「そうね。私が一番怪しいかも」
昼過ぎ、物置の戸を開けると、缶は元の場所にあった。
札束はなく、祖父の字の紙が一枚だけ入っていた。
「わしは、白バイに乗ったことはない」
誰もすぐには動かなかった。
「私じゃないわよ」と涼子さんが笑った。
「俺でもないっす」と颯太が笑った。
「僕でもありません」と健太さんが笑った。
「私でもない」と私も笑った。
「俺でもない」と大輝が言った。
五人全員が、同じ顔で笑っていた。
その夜、閉めたはずの物置の戸を、もう一度開けると、

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